2012年7月22日 聖霊降臨後第8主日 「嵐を静める」

マルコによる福音書4章35〜41節
高野 公雄 牧師

その日の夕方になって、イエスは、「向こう岸に渡ろう」と弟子たちに言われた。そこで、弟子たちは群衆を後に残し、イエスを舟に乗せたまま漕ぎ出した。ほかの舟も一緒であった。激しい突風が起こり、舟は波をかぶって、水浸しになるほどであった。しかし、イエスは艫の方で枕をして眠っておられた。弟子たちはイエスを起こして、「先生、わたしたちがおぼれてもかまわないのですか」と言った。イエスは起き上がって、風を叱り、湖に、「黙れ。静まれ」と言われた。すると、風はやみ、すっかり凪になった。イエスは言われた。「なぜ怖がるのか。まだ信じないのか。」弟子たちは非常に恐れて、「いったい、この方はどなたなのだろう。風や湖さえも従うではないか」と互いに言った。

マルコによる福音書4章35〜41節


私たちの父なる神と主イエス・キリストから、恵みと平安とがあなたがたにあるように。アーメン

マルコは4章1~34にたとえ話を集めたあと、こんどは4章35~5章43に奇跡物語を集めています。きょうの福音は、その中の「突風を静める」物語から福音を聞きとりたいと思います。

《その日の夕方になって、イエスは、「向こう岸に渡ろう」と弟子たちに言われた。そこで、弟子たちは群衆を後に残し、イエスを舟に乗せたまま漕ぎ出した。ほかの舟も一緒であった》。

「イエスを舟に乗せたまま」とありますが、それは4章1に《イエスは、再び湖のほとりで教え始められた。おびただしい群衆が、そばに集まって来た。そこで、イエスは舟に乗って腰を下ろし、湖の上におられたが、群衆は皆、湖畔にいた》とあるように、イエスさまはガリラヤ湖のほとりに集まった群衆に対して舟の中からたとえ話で教えられました。そして、夕方になって話を終えると、群衆の待つ所には戻らず、向こう岸に渡ることにしたのです。

《激しい突風が起こり、舟は波をかぶって、水浸しになるほどであった。しかし、イエスは艫(とも)の方で枕をして眠っておられた。弟子たちはイエスを起こして、「先生、わたしたちがおぼれてもかまわないのですか」と言った》。

ガリラヤ湖は、地中海の海面より212メートルも低いところにあり、西岸はなだらかな丘陵ですが、東岸は断崖が迫っていました。このすり鉢状の地形のために陽が沈むとしばしば突風が吹き降ろして湖が荒れたのです。イエスさまの弟子には漁師がいましたから、こういう気象をも舟の操縦をも知り尽くしていたはずですが、それでも、波が舟の中に打ち込んできて、命の危険にさらされることになりました。しかし、イエスさまは弟子たちの窮状も知らぬげに、舟の後ろの方で枕をして眠っていました。弟子たちはイエスさまを呼び起して、《先生、わたしたちがおぼれてもかまわないのですか》と訴えています。パニックに陥った弟子たちの言葉にはイエスさまをなじるようなニュアンスが感じられます。本当は舟を出したくなかったのに、先生が「向こう岸に渡ろう」などと言うので、漕ぎ出したのです。それで私たちはこんな目に遭っているのに、助けてくらないのですか。こんな気持ちでしょうか。

《イエスは起き上がって、風を叱り、湖に、「黙れ。静まれ」と言われた。すると、風はやみ、すっかり凪(なぎ)になった。イエスは言われた。「なぜ怖がるのか。まだ信じないのか。」弟子たちは非常に恐れて、「いったい、この方はどなたなのだろう。風や湖さえも従うではないか」と互いに言った》。

イエスさまがこの急場に眠っているとは信じがたいことですが、さらに驚くことが描かれます。目を醒ましたイエスさまが、嵐に向かって「黙れ」と