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主の母マリアの日

 イエスの母マリアは、ヘブライ語ではミリアムと呼ばれたユダヤ人の娘であり、伝承ではダビデ王の家系の出身であったと言われています。ルカによる福音書によると、ガリラヤの町ナザレに住んでいたマリアは、ダビデ家のヨセフと婚約していましたが、その時、神から遣わされた天使ガブリエルから、「聖霊によって男の子を身ごもり、その子をイエスと名付けなさい」と告げられます(ルカ1:26~38)。マリアは天使の言葉を受け入れ、年老いた親類のエリサベトが身ごもっていることを告げられたので、エリサベトのもとを訪ね、彼女から祝福の言葉を告げられます。そしてマリアは神への賛美と感謝の歌を歌います。これが今日マグ二フィカートとして知られているマリアの賛歌です(ルカ1:38~55)。

 ヨセフは身ごもっているマリアを妻として迎え入れ、住民登録の命令によって、マリアと共にベツレヘムへ旅立ちます。その道中の飼い葉桶でイエスは誕生しました。ヨセフとマリアとイエスはヘロデ大王による幼子殉教者の殺戮から逃れるために一旦エジプトに避難し、ヘロデ大王の死後にナザレに戻り定住します。

 イエスの公生涯の中でマリアはカナの婚礼(ヨハネ福音書2:1~10)などの物語に時折登場します。イエスの昇天後は、エルサレムで使徒たちや他の弟子たち、婦人たちと行動を共にし、家の上の部屋で彼らと熱心に祈っていました(使徒1:12~14)。その後の彼女の消息について、聖書には何も描かれていません。エルサレム、またはエフェソで亡くなったのではないかと言われています。

 431年のエフェソ公会議で、マリアはイエスキリストの神の母として定義づけられ、以後教会ではマリアへの崇敬が盛んに行われていきます。宗教改革の時代になると、マリア崇拝への批判も盛んになってきますが、ルターは説教の中で聖書に見るマリアの信仰応答を評価します。しかし、マリア崇拝に対しては、マリアばかりに心が向けられ、キリストが低くされてしまうことに対する懸念もありました。

 マリアの祝日の由来はかなり古く、また多くの祝祭日があります。最古のマリア祝日は4世紀ごろに降誕日に付随する12月26日に「聖なる、永遠のおとめ、神の母の記念日」として守られました。3月25日は神のお告げの祝祭日として、マリアへの天使の受胎告知を通してマリアを記念しています。その他、マリアの被昇天を記念する8月15日の被昇天の祝祭日、神の母であるマリアには原罪がないとされ、そのマリアにイエスが宿ったことを記念する12月8日の無原罪の宿りの祝祭日などが今日世界中で知られているマリアの祝祭日です。