マタイによる福音書28章16〜20節
藤木 智広 牧師
私たちの父なる神と主イエス・キリストから恵みと平安とが、あなたがたにあるように。アーメン。
遠藤周作の小説「沈黙」の中に、キチジローという青年が登場します。彼は、ポルトガルから命懸けで日本に潜入したロドリゴ神父と船の中で出会い、ロドリゴたちを五島列島に住む隠れキリシタンの村に案内します。キチジローはこの村のクリスチャンですが、事あるごとにクリスチャンであることを隠し、簡単に葉教することを誓ったり、その度に赦しを乞うたりしてロドリゴたちを困らせます。挙句の果てには、ロドリゴを裏切って、役人に彼の所在をばらしてしまいます。その後もキチジローは捕まったロドリゴを訪ねては役人に追い返され、そんな彼のことをロドリゴは軽蔑します。結局このロドリゴも踏み絵を踏んで、棄教することを受け入れるのですが、彼の下にまたしてもキチジローが赦しを求めて訪ねます。この時、キチジローの顔を通してイエスキリストがロドリゴに語るのです。「私は沈黙していたのではない。お前たちと共に苦しんでいたのだ」「弱いものが強いものよりも苦しまなかったと、誰が言えるのか?」最後にロドリゴはキチジローを赦すのです。Read more